英語の読み書き困難があるお子様のサポート方法(学習障がいの一種、ディスレクシアについて)

 お子様が英語を学ぶ過程で、なかなか単語が読めるようにならない、スペルミスが多い、アルファベットが鏡文字になる、など気になる親御さんも多いかもしれません。これらの不正確性は英語初学者の多くが通る道で、学習を続けるうちに少しずつ改善されていくことが一般的です。しかし、中長期かけてもなかなか読み書き習得が進まない、またはそのスピードが非常にゆっくり進むお子様もいます。

 お子様が英語の読み書きに苦労しているかもしれないと感じたら、読み書き困難(ディスレクシア)について理解し、適切な教育的支援を行うことが大切です。この記事では、読み書き困難の基本的な知識から、英語学習における読み書きの困難さ、そしてそれを支援するための方法を紹介します。

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英語の読み書き困難について

一般的な読み書き困難(ディスレクシア)の定義

 ディスレクシアは主に、読み、書き、スペルの学習に困難を抱える特異な学習障害の一つです。これは知能発達の遅れからくるものではなく、主に言語の音韻処理能力が先天的に弱いことによるものとされています。言語は音で構成されるものであり、それを書き表したものが文字ですが、この「音」と「文字」を対応させて理解したり、相互に変換したりすることに難しさが生じるのが特徴です。医学的には「発達性読字障害」と称されます。

英語特有の読み書きの難しさ

 英語を母語とする子ども達の内、母語の読み書き困難がある子どもは10%程度いると言われており、一方で、日本語を母語とする子ども達の中での母語の読み書き困難の率は1〜2%と言われています。これは、言葉の表記システムそのものの難易度が各言語により異なることから来ています。英語は日本語に比べ、特に次の2つの点において難易度が高いと考えられ、そのためこのように困難を生じる割合が高いと推測することができます。

①英語は1文字に対応する音が細かい

 例えば日本語で「はこ」という2文字の仮名がある時、「は」という1文字には「h」という子音と「a」という母音のセット(音節)が含まれています。「hako」という4つの音の要素(音素)がたった2文字で表現されるため、文字の読み書きで処理すべき情報も少なくて済むことになります。

 一方、英語の “box”という3文字の単語を見てみると、”b” “o” “x” のそれぞれの文字に1つの子音または母音が割り当てられています。1文字に対応する音が細かいほど、1つの概念を示す時に組み合わせて使う文字数が増えることになるため、文字の読み書きで処理すべき情報が多くなります。

 この1文字に対応する音の細かさ(粒子性)が、日本語よりも英語の読み書きを難しくしている1つの要因と考えられています。

②英語は文字と音の対応に不規則性が高い

 ひらがなやカタカナは1つ1つの文字に対応する音が1つずつしかなく、基本的に例外がありません(漢字は音読みと訓読みがあったり、組み合わせにより読み方が変わったりと1対1ではなくなるため難易度は上がります)。

 英語の場合、先ほどの “box”のように基礎的フォニックスだけで読める単語や、”law” の “aw” で [ɔː]という音になるような、組み合わせによる応用的フォニックスが数多く存在する他に、こういったフォニックスが当てはまらない例外的な読み方をする単語が全体の3割程度も占めています。この3割程の例外的な単語については、かたまりとして視覚で覚えて読める・書けるようになる必要があるもので、サイトワード(sight words)と呼ばれています。わかりやすい例として、日本人小学生がなかなか読めないサイトワード “one” があります。フォニックスの例外であり、かたまりの見た目で認識できるようになる必要があります。

 このように、文字と音の対応が不規則になる割合が高い英語は、読み書き困難になりやすい言語と言えます。

日本語と英語のどちらに出現するか

 読み書き困難は神経学的な原因による先天的なものである点、そして、言語による読み書き困難の出現率に差がある点から、日本人においては主に次の2つのパターンが考えられます。

①日本語の読み書きも困難で、英語の読み書きも困難
②日本語の読み書きに問題はないが、英語の読み書きが困難

 ①の場合はすでに日本語の読み書きが困難であると保護者や教育関係者が認識できているため、英語においても読み書き困難が生じることが事前に想定でき、早い段階から支援を行うことができます。②の場合は日本語の読み書きに問題がないため、英語の読み書き問題に気づきにくかったり、気付いたとしても適切な支援環境を作れないまま、親御様もお子様もスペルを覚えられないことに対する焦りで辛い状況になってしまうことがあります。

英語読み書き困難の様子の例

読み書き困難の現れ方やその程度については幅広い個人差がありますが、下記はその一部の例です。

  • アルファベットが覚えられない
  • 基礎的な単語でもなかなか読めるようにならない
  • 短い単語でもなかなか正しく書けるようにならない
  • 読み書きのミスが多い
  • 文字の反転がなかなか治らない
  • 読み書きのスピードが非常に遅い
  • 似ている単語をよく混同してしまう

学校での英語学習への影響

 中学校以降の学校英語では、リーディングやライティングといった文字を中心とした授業やテストが行われます。1つスペルを間違えただけで試験でバツをもらうという世界です。英語読み書き困難のお子様は学業成績を上げることが難しく、そこから英語学習の意欲低下につながることが多くあります。

ディスレクシアの診断

 一般的なディスレクシアの診断は、専門の医療機関や教育機関による詳細なアセスメントが基本です。テストには、読み、書き、言語理解に関連するさまざまな種類があり、児童心理学者や言語療法士、特別支援教育の専門家によって実施されるのが一般的ですが、日本国内において英語ディスレクシアの診断ができる医療機関はまだ少ないのが現状です。

 インターナショナルスクールなどに通っているお子様で、学校からディスレクシアの可能性を示唆された場合、医療機関の診断書を提出することで学習環境やサポート体制を整備してくれるケースもあります。読み書き困難から学校の授業やテストで大きな苦痛があるような場合、環境が整備されることで安心して学校に行けるようになりますので、まずは医療機関に相談するところから始めると良いでしょう。

 近隣に専門医が見つからない場合は、英語ディスレクシアかどうかの診断や障害の有無に関わらず、読み書き困難の傾向が見られるお子様に対し、ディスレクシアのお子様への対応を参考にできるところから学習環境を整えていくという姿勢が良いでしょう。

読み書き困難のお子様のための英語学習法

音から入ることの重要性

 日本の学校教育ではまだまだ文字を中心とした英語教育が行われているため、読み書きにばかり目が行きがちですが、言語とは元々音で構成されているものです。読み書きという行為も、その音を変換したものです。ですので、まずは音による英語学習から始めることがとっても大切です。音を聞いて分かる単語を増やす、分かるフレーズを増やす、という音韻認識を育てる活動がその後の読み書きの力につながっていきます。

 音を中心としたリスニング・スピーキングの練習であれば、読み書き困難のお子様でも学習成果をあげることができます。これは、中学校以降で読み書きにおいて自信をなくしてしまったり意欲が低下する可能性がある場合でも、「リスニングならできる」「話すことならできる」と、英語学習の一部分でもあっても自信が持てることに繋がり、その後の英語学習に良い効果が期待できます。

基礎的フォニックスの反復練習

 音で認識できる英語がある程度増えてきたら、基礎的フォニックスの反復練習を取り入れることが有効です。アルファベットが書かれたカードを活用して、1つ1つの文字の音を練習したり、次の動画のようにゲーム感覚で遊びながら反復すると楽しく学習できます。

 なかなかできるようにならずにもどかしい気持ちになることもあるかと思いますが、ちょっとしたゲーム程度に捉え、お子様も楽しめるような明るい雰囲気で取り組めると良いですね。

応用的フォニックスの導入

 基礎的フォニックスがある程度身につき、”cat” “hit” “sad” などのような短く、基礎的フォニックスだけで読めるような単語が増えてきたら、少しずつ応用的フォニックスも紹介するようにしていきます。”ch” “sh” “ck” などの組み合わせの子音や、”aw” “oa” “ea” などの組み合わせの母音など、応用的フォニックスは数多くありますので、中長期かけて少しずつ触れる中で認識できるものを増やしていきます。

フォニックスの例外への対応

 英単語のうちの約3割はフォニックスが当てはまらない例外的なスペルであると言われています。サイトワード一覧などでまとめて練習できるものも一部ありますが、そうでないものが圧倒的多数です。これらの単語については、たくさんの英文テキストに音と共に触れる中で繰り返し目にする経験値によって、じわじわと底上げを図るという方法が有力な選択肢になると考えられます。

 英語の本などを用い、文字を一緒に見ながらの読み聞かせ(または読み聞かせ音声の再生)を続けることで、文字と音をセットにしてインプットすることができます。

英語学習を始める年齢

 早期英語教育の是非については色々な考え方がありますが、年齢が上がるにつれて母語である日本語の音韻体系が強固になり、外国語の音韻体系への感度が低くなっていくため、英語の読み書きの土台となる音による英語との接点については、幼児や小学低学年など早い時期に持ち始めると良いと考えられています。

 中学校以降になると読み書き中心の英語教育になるため、それよりも前の小学生までの時期に英語学習をスタートさせ、試験のプレッシャーと無縁の環境でできるだけたくさんの音に触れさせてあげたいものです。

個別指導塾の選び方

 現在の学校教育現場では残念ながら英語読み書き困難のお子様たちへの対応が十分とは決して言えない状況です。その場合、適切なサポートを得られる個別指導塾を見つけることが1つの選択肢となるでしょう。専門知識を持った教師がいるかどうか、個々の様子に合わせてたカリキュラムが可能かが重要です。

項目内容
指導の質ディスレクシアへの理解があり、対応経験のある教師が指導を行う
カリキュラムディスレクシアの生徒に特化した個別のカスタマイズができる
教材動画や音声などの視覚・聴覚を使う教材を用いて指導を行う
サポート体制授業の進行だけでなく、学習のモチベーション維持にも注力している

オンライン英語スクール Brave Kids の場合

 私上村が運営している Brave Kids は読み書き困難のお子様専門のスクールというわけではありませんが、次のような特徴があるため、読み書き困難のお子様をサポートさせていただくことができると考えております。

漫画を活用した楽しい多聴多読

 まず聞いてわかる語彙を増やすためにも、音を伴う意味ある英語にたくさん触れることが大切です。Brave Kidsではお子様が飽きずに楽しめ、日常で使う語彙や表現をたくさんインプットできるバイリンガル版のドラえもんを使って多聴多読していきます。お子様が毎日1人ででも学習できるよう、多聴多読のサポート動画を毎週お送りしているので、親御様が読み聞かせができないご家庭でも無理なく学習が進められます。

複数のアプローチによるフォニックス指導

 フォニックスを学べるテキストなども一般販売されていますが、応用フォニックスや例外的な単語の数は非常に多く、テキストを数冊こなすだけで習得できるものではありません。Brave Kidsでは、毎週お送りするオリジナル動画の中で少しずつ基礎・応用のフォニックスを練習したり、市販テキストを併用したり、個別指導でフォニックスの定着度を確認したりと様々な角度から指導しています。また、セリフを指や目で追いながらのドラえもん多聴多読を毎日することで、音と文字と意味をセットにして繰り返し刷り込むことで、その経験値が文字認識力を高めていくことになります。

日本人の担任コーチが個別指導

 Brave Kidsでは英語が堪能なバイリンガルコーチが担任制で生徒さんを指導させていただきます。個人差が大きい読み書き困難のお子様お一人お一人の様子を見ながら、またお子様の性格面も考慮しながら、挫折せず自信を持って学習を続けられるようサポートします。親御様とも相談させていただきながらお子様にとって無理のない方法・ペースを一緒に模索しています。

専門医との情報連携

 小児神経学専門医の先生方と定期的に意見交換を行う体制を敷いていきます。医療現場で上がった課題を教育面でどのように対応できるか検討し、また、実際の生徒さんたちがどのような様子であるか共有しアドバイスをいただくなど、読み書き困難のお子様たちに少しでも貢献できるよう連携して参ります。また、野村芳子小児神経学クリニックにおける英語ディスレクシア診断への協力も行っております。学校に提出するための診断書が必要などのご事情がある方はまずクリニックにお問い合わせください。

 子ども向けオンライン英語スクール Brave Kids の受講をご検討の場合は公式ホームページから詳細をご確認の上、まずは無料個別相談にお申し込みください。

まとめ

 英語の読み書き困難は学校などでの学習や試験に影響しますが、できるだけ早い段階から適切なサポートを受けながら、中長期かけて音と文字に触れる経験を積むことで、少しずつスキルを習得できたり、音を中心とした言語活動で自信を付けたりできる場合があります。読み書き困難の表出の仕方やレベルには個人差があるので、個々の様子や性格に合わせた方法・ペースで焦らず、できれば楽しんで学習し続けることが鍵となるでしょう。

参考文献
村上加代子(2021) 日本の英語教育におけるディスレクシア生徒に関する一考察
大井恭子(2024) 日本の英語教育における読字障害(dyslexia)の現状
宮寺千恵(2024) 英語読字障害児への支援教育開発

野村芳子小児神経学クリニック院長 野村芳子先生のコメント

学習障害( learning disability、LD)とは、単一の障害でなく、知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する等の能力のうちの特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態を指すものです。その種類は、読字障害(ディスレクシア Dyslexia)、書字表出障害(ディスグラフィア Dysgraphia)、算数障害(ディスカリキュリア Dyscalculia)があります。
学習障害を持つ子どもでは注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アスペルガー症候群を伴うこともあります。また、バランス感覚を欠き、身体の協調運動の困難を合わせ持つ子も多くいます。
学習障害の原因は、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されており、学習障害への対応は早期からの介入が必要です。早期からの支援は学校で、またその後の生活において成功するチャンスを増すといえます。また、もし適切な支援がない場合、子どもは欲求不満となり、自己評価の低下や他の問題につながることもあります。
 
Brave Kidsの包括的な学習プログラムは、英語ディスレキシア(English Dyslexia)のお子様も自らの学習モチベーションを高めながら、楽しく学べるように作られていると思います。
発達早期から適切な支援のもと長期的に学習することが“英語ディスレキシア”を改善させます。

 

著者のイメージ画像

Brave Kids/代表兼ヘッドコーチ
上村 綾子

ニューヨーク州立大学心理学部卒 / 大人向け英会話講師 / オンライン英語教材開発 / 英会話書籍「Ayaのリアルトークリスニング」小学館より出版/ 英会話ポッドキャスト「English Aya Pod」の制作&出演 / 子ども向け英語教室運営 / バインリンガルナレーター / ビジネスマン向け英語コーチングカリキュラム開発 / TOEIC985点 / TESOL / J-SHINE